人工透析室
人工透析室とは
腎臓内科部長 髙見 勝弘
人工透析室とは、主に透析療法を専門的に行う診療科です。
腎炎などの病気によって腎臓の機能が正常の10%以下にまで低下すると(腎不全)、自分の腎臓の力では体内の老廃物や余分な水分を適切に排泄することが不可能になり、体内に有害なものがどんどん溜まってしまいます。
これを放置すると尿毒症による心不全など、命に関わる症状が出現する危険性があります。
このような場合に必要なのが、本来は腎臓を介して排出している老廃物や水分を人工的に除去する代替治療、すなわち透析療法です。当室では、透析器を介して血液をきれいな状態に戻す血液透析をメインに行っています。
※1 血液濾過透析(HDF)を開始しました
当院では2020年度より血液透析(HD)に変わり、新たな治療方法である血液濾過透析(オンラインHDF・I-HDF)を導入しました。
当院の人工透析室の特徴
- 当院の人工透析室は、1996年に開設しました。
- 当院は、指定自立支援医療機関です。透析療法を受ける方は、身体障害者の手続きによって治療費用をはじめ、さまざまな社会保障を受けることができます。
- 当院は、以下の施設基準を取得しています。
慢性維持透析を行った場合1 |
導入期加算1 |
透析液水質確保加算 |
慢性透析濾過加算 |
下肢末梢動脈疾患指導管理加算 |
- 2020年度より、全台(13床)オンラインHDF・I-HDFを搭載した日機装社製の最新機種(DCS-200Si)を導入しています。DCS-200Si には血液量モニター(BV計)が内蔵されており、透析中の変化を観察することで、患者様により安全な透析を提供できるようにしています。
- バスキュラーアクセスのトラブル時は、当院にて治療を受けることが可能です。(バスキュラーアクセスの作製は、近隣の施設を紹介しています。)
※当院に通われている患者様以外のシャントPTAも積極的に受け入れいたしております。 - 当院では、超純水透析液(ウルトラピュア)と呼ばれる水質を保持するため、さまざまな取り組みを行っています。
- 当院では、透析患者様のための送迎サービスを提供しています。
- COVID-19感染防止のため、ベッドの間にパーテーションを設置しました。
治療法
透析療法(血液浄化療法)
血液透析(HD)
血液透析とは、人工腎臓といわれるダイアライザーに血液を通して、血液中の老廃物や余分な水分を除去し、血液をきれいにしてから体内に戻す治療法です。末期の腎不全、慢性腎不全における治療の主流にもなっています。
ダイアライザーに血液を通す際、1分間に約200~300mlの血液を取り出す必要があります。そして全身の血液をきれいにするためには、これを長時間持続して行わなければなりません。これだけの血流量を確保するためには、採血などで用いる普通の血管では不可能です。そのためまずは、血液の出入り口となるシャントを手術で作製します(バスキュラーアクセス/作製は近隣の施設を紹介します)。シャントとは、静脈と動脈をつなぎ合わせた太い血管で、一般的には利き腕と反対の腕でなるべく前腕の手首に近い部位、または親指の付け根に作ります。このシャントに血液を抜くための針と、戻すための針を刺します。後はダイアライザーに血液が送られ、ダイアライザー内できれいになった血液が体内へ戻ってきます。
一般的な血液透析の場合、1週間に3回程度通院し、約4時間以上をかけて血液を浄化します。
血液濾過透析(オンラインHDF)
血液濾過透析は、血液透析に血液濾過を合わせた治療法で、血液濾過透析の中でも老廃物を除去するための補液に清浄化された透析液を使用する治療をオンラインHDFといいます。血液透析の場合、血液と透析液の濃度の差で老廃物を除去するのですが、血液濾過透析は大量に補液を行い濾過することで圧力をかけるため、血液透析では除去しにくいタンパク結合性尿毒素なども除去することが可能となり、関節痛や痒み、不眠、貧血、イライラ感といったさまざまな症状の改善が期待できます。
オンラインHDFに期待される効果
- 透析アミロイドーシス(長期透析による合併症)による関節痛の改善
- 皮膚掻痒感の改善
- レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)の改善
- 食欲増進(栄養状態の改善)
- 貧血改善
- 酸化ストレスの軽減
- 色素沈着などの症状微候の改善
- 透析中の血圧安定、ほか
間歇補充型血液濾過透析(I-HDF)
I-HDFは、近年登場した新しい透析療法で、血液透析中一定時間ごとに100~200mLの補液を行うことで、通常の除水に補液分を上乗せして除水を行っていく治療法です。透析中の末梢循環動態改善(治療中の末梢血流の改善)と、治療中の血圧の安定が期待できます。栄養状態への影響が少ないため、高齢者や栄養状態の悪い方に適しています。
透析スケジュール
当院の透析スケジュールは、月・水・金:午前と午後の2クール/火・木・土:午前のみの1クールとなります。
※下記表は横にスクロールしてご覧ください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9:00〜 14:00 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - |
14:00~ 19:00 |
○ | - | ○ | - | ○ | - | - |
※祝日は通常どおり行っています。
※ベッドの空き状況は当院へお問い合わせください。
ご持参いただくもの
- パジャマ(体重管理のため、できるだけ同じものをご着用ください。)
- 上履き
- バスタオル 1枚
- フェイスタオル 1枚
- 毛布等の防寒具
- 止血ベルト(当院でも販売しています。)
- イヤホン(テレビの視聴は無料です。)
送迎サービスについて
透析のために毎週3回の通院を行うことは、長時間歩くことがつらい方や、交通の便の悪い地域の方にとって大きな負担となります。
その通院の負担を少しでも和らげることができるよう、当院では送迎サービスを行っています。
透析患者送迎サービスについて、詳しくはこちら
※地域によってはご希望に添えないこともありますので、ご了承ください。
特殊な治療法
当院では、持続緩徐式血液濾過透析法(CHDF)やその他様々な血液浄化療法、腹水濾過濃縮再静注法(CART)などの特殊な治療も行っています。
持続緩徐式血液濾過透析法(CHDF)
救急・集中治療を要する病態が不安定な患者様や、通常の血液透析が困難な患者様に対して行う治療法で、血液流量、透析液量、血液濾過器の膜面積を下げて、通常の透析より時間をかけて行います。
腹水濾過濃縮再静注法(CART)
難治性腹水・胸水症でお困りの患者様へ行う緩和治療です。がんや肝硬変などによって溜まった腹水・胸水を取り出し、細菌やがん細胞を除去した後、アルブミン等の有用成分を濃縮して、再び体内に点滴で戻します。
比較的大量に抜水できるため、腹部膨張感による苦痛が軽減し、QOL (Quality of Life)の改善へとつながります。
※当院ではCARTを目的とした短期間の入院透析も積極的に行っています。
検査内容
定期検査について
安心・安全な透析を行うため、当院では透析患者様に以下の検査を定期的に行っています。
血液検査 | 月2回 |
---|---|
感染症検査(B型肝炎・C型肝炎) | 年2回 |
X線検査(胸部) | 月1回 |
心電図検査 | 3ヶ月ごと |
ABI(足関節上腕血圧比)検査 | 月1回 |
超音波検査(心臓) | 年2回(心疾患のある患者様は3ヶ月ごと) |
超音波検査(腹部・甲状腺・頚動脈) | 年1回 |
超音波検査(バスキュラーアクセス) | 3ヶ月ごと |
MRI検査(頭部) | 年1回 |
CT検査(腹部) | 必要に応じて実施 |
内視鏡検査など | 必要に応じて実施 |
フットケアについて
透析患者様は、足潰瘍・壊疽といった足の動脈硬化性病変(末梢動脈疾患・閉塞性動脈硬化症)の発症リスクが高いにも関わらず、重篤な足病変が発生してしまうまで治療を受けずにいらっしゃるケースが少なくありません。
当院では、爪切り・胼胝(魚の目)の処置をはじめ、傷の管理、定期的な足の血流評価「ABI(足関節上腕血圧比)検査」などを含めた、総合的なフットケアを行っています。
特に血流障害が強く、治療が必要と判断された患者様については、その旨をご説明し同意いただいたうえで、専門的な治療体制を有している連携医療機関:川崎病院へ紹介させていただきます。
設備紹介
- 透析ベッド13床(オンライン HDF・I-HDF)
- 多用途透析用監視装置(DCS-200Si)13台・多人数用透析液供給装置(DAB-20NX)・全自動溶解装置(DAD-70Si)・透析用水作製装置(FC-REシステム)
透析液清浄化の取り組みについて
透析療法は透析液として多量の水を必要とするため、水が命の治療法といわれています。
通常、日本で使用されている水道水は塩素で消毒されているため、細菌は存在しません。ですが、消毒後死滅した細菌からは、さまざまな生物活性物質ができます。その代表的なものがエンドトキシンです。
昨今のダイアライザー性能の向上に伴い、透析液が逆濾過により血液側に流入してくる現象(内部濾過)がみられるようになってきました。
そのため、透析液中に細菌が死滅した際に放出されるエンドトキシンが混入していると、体内で炎症を引き起こし、貧血、アミロイドーシス、動脈硬化等の悪化要因となるという報告がされています。
当院では、透析液中のエンドトキシン濃度を可能な限り低値にし、超純水透析液(ウルトラピュア)と呼ばれる水質を保持するために、さまざまな取り組みを行っています。
- RO装置(透析液に使用する清浄度の高い水(RO水)を精製する装置)内を常に無菌状態するため、装置タンク内以降の供給ラインを定期的に消毒しています。
- 透析液を供給する役割を果たす人工腎臓(ヘモダイアフィルター)への接続部の透析液カプラーを、定期的に洗浄・消毒しています。
- RO装置・透析液供給ラインには限外濾過膜(UF膜)を設置し、各透析用監視装置にはエンドトキシン補足フィルター(ETRF)を用いる多段フィルターシステムで透析液清浄化を構築しています。
- 逆浸透水処理装置、多人数用透析液供給装置、透析用監視装置などの清浄化が保たれているか定期的に検査を行い、継続的に監視しています。
当院の管理基準
生菌数 | エンドトキシン | |
---|---|---|
透析用水 | 100CFU/ml未満 | 0.05EU/ml未満 |
透析液 | 0.1CFU/ml未満 | 0.001EU/ml未満 |
オンライン補充液 | 10-6 | 検出感度未満 |
透析療法のご相談は
ご案内GUIDANCE
アクセスACCESS
〒653-0801 神戸市長田区房王寺町3-5-25
電車
- 阪急、阪神、山陽、各線の「新開地駅」から神戸電鉄に乗換
- 神戸電鉄「長田駅」より、徒歩約6分
※「長田」とつく駅が、他にもあります。(JR新長田、高速長田)乗り間違いにご注意ください。
タクシー
JR「兵庫駅」よりタクシーで約15分