肝臓病の栄養療法
慢性肝炎、肝硬変などの肝臓病には、第二次世界大戦後、米国のパテック博士らが高たんぱく、高カロリー、高ビタミン食を摂ることで良い効果があると報告し、以後、肝臓病の患者様には、高たんぱく、高カロリー食が推奨され、一定の効果が示されてきました。
ただ、その後、慢性肝炎、肝硬変の病態の解明や高カロリー食による脂肪肝の増加などが指摘され、よりきめの細かい肝臓病の栄養療法が確立してきました。
①バランスの良いカロリーとたんぱく質の摂取
肝臓病全ての方に、高カロリー、高たんぱく食が必要ではなく病態に応じたバランスのよいカロリーとたんぱく摂取が重要です。高カロリー摂取による肥満、ひいては糖尿病の発症は肝癌発生のリスクを高めます。適切な量と質の食事、十分なビタミンを摂って、肝臓の修復、再生をはかることが肝臓病の栄養療法の目的です。
補足)たんぱく質の減少は、血液中のアルブミン(代表的なたんぱく質)でわかります。アルブミンが低くなると、肝臓の再生能力も衰えます。肝臓に余力が残っている間に、必要な栄養を補い肝臓の悪化を抑えることが必要です。
②分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤の補充
BCAAはたんぱくの合成を亢進しアンモニアを低下することで、栄養状態や免疫機能の改善に重要なアミノ酸の一種です。BCAAは食事のみでは補充できないため、肝硬変でBCAAが不足している方については、内服又は点滴静注による補充が必要です。
必須アミノ酸のうち、イソロイシン、ロイシン、バリンなどはその分子の形から分岐鎖アミノ酸(BCAA)といわれます。BCAAを多く含む食品としては豚ひき肉、鶏肉、さんま、まぐろ(赤身)などがあります。食事のみでBCAAの不足を補うことは不可能なので、BCAA製剤が用いられています。
③就寝前食(LES : late evening snack)の重要性
肝硬変の患者様の多くは肝細胞の減少によって糖をグリコーゲンとして肝臓に貯蓄する量が減少し、絶食時には肝臓からの糖の放出が不十分となります。とりわけ、夕食から朝食までの絶食により肝臓からの糖の供給が減少し、早朝空腹時のエネルギー状態は健常者の2~3日の絶食状態に相当します。従って、就寝前に軽食(LES)を摂ることが朝のエネルギー不足を解決するのに有効です。これは肝硬変患者の空腹時に行なう検査時の重要な視点です。
④鉄制限の必要性
研究の進歩により、血清鉄が肝臓(肝機能)に悪いことがわかってきました。食事療法を含む鉄制限が重要です。“しじみ汁は肝臓病に良い”のはむしろ間違いです。しじみは鉄分をたくさん含むからです。この鉄制限の考え方により、血液を1日200ml程度抜くことにより血清鉄を減らす「瀉血(しゃけつ)療法」が保険適応になり、肝機能を改善するなどの効果を上げています。
〈鉄が多く含まれる食材〉 ※①のグループの食品の方が、鉄が吸収されやすい形で含まれています
①貝類(あさり、はまぐり、しじみ等)、牛肉、豚肉、レバー、卵黄など
②緑黄色野菜、海藻類、とうもろこし、大豆、納豆、豆腐、切干だいこん、ひじき、干しぶどうなど
⑤健康食品による肝障害
少数ではありますが、健康食品による肝障害が報告されており、アガリスク、ウコン、プロポリスなどの健康食品の摂取も注意が必要です。とりわけ、ウコンの鉄含有量は多く、肝臓にとっては問題です。体に良いと思い摂取されている方もおられますが、肝臓病などの治療を受けておられる方は、摂取について主治医に相談していただくことをおすすめします。
当院では、患者様ごとに栄養サポートチーム(NST)による栄養支援を行っています。
肝臓の部屋
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