内視鏡室
内視鏡とは
内視鏡とは、先端部に小型カメラ(CCD)の付いたスコープ(細いチューブ)を体内に挿入し、体内の映像を直接目で見ながら、検査や治療や処置を行うことのできる医療機器です。
内視鏡を用いることで、胃がんや大腸がんといった悪性腫瘍を早期に発見することができるようになり、また従来は開腹手術を必要とした悪性腫瘍でも、進行度によっては検査と同時に切除が可能となりました。
内視鏡は「体内の様子を直接目で見たい」という要望のもとに発明され、発展してきました。1898年にドイツで初めて内視鏡の一つである胃カメラの開発が試みられましたが、実用化には至りませんでした。その後、1949年以降ここ日本で本格的な開発が進められ、実用に耐え得る胃カメラが誕生。胃がんの早期発見に大きく貢献しました。そして、カメラの小型化や映像・通信・工業技術の向上により、見るだけではなく治療や処置も同時に行えるようになり、内視鏡は今では医療現場にとって欠かせない存在となったのです。
当院の内視鏡検査・治療(手術)の特徴
当院では、内視鏡を用いた大半の診断、治療(手術)に対応可能です。
- 当院は、日本消化器病学会の認定施設です。日本消化器病学会専門医および指導医が在職しています。
- 当院は、日本消化器内視鏡学会の認定施設です。日本消化器内視鏡学会専門医および指導医が在職しています。
内視鏡検査
内視鏡検査では、主に内視鏡カメラを用いて目視で体内に異常がないかの確認を行います。そして異常が見受けられた場合には、患者様の了承のもと、患部の切除などといった治療や処置を行うことが可能です。よく選択肢の対抗としてあげられるレントゲン(バリウム)検査との大きな違いは、この異常を発見した際に時間を置くことなく、同時に治療や精密検査を始められるという点です。
内視鏡は臓器ごと、あるいは使用目的ごとに作られているため種類が豊富にあることが特徴ですが、ここでは多くの方が受ける機会の多い上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)と、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)についてご紹介します。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
喉・食道・胃・十二指腸を診る検査で、口から行う場合を経口内視鏡、鼻から行う場合を経鼻内視鏡と呼んでいます。当院ではご希望に応じてお選びいただけます。この検査によって、逆流性食道炎や胃炎、潰瘍、ポリープ、穿孔、ピロリ菌の存在など、さらには食道や胃や十二指腸の早期がんを発見できます。
鎮静剤の使用について
胃カメラの際は、通常スプレーやゼリー状の麻酔薬を使って咽頭の違和感を緩和しますが、それでもなお苦手意識の強い方には、少量の鎮静剤を用いた検査も可能です。嘔吐反射や腹部の違和感が軽減され、ウトウトしたリラックス状態で検査を受けていただけます。ただし、鎮静剤には吐き気や眠気、ふらつきなどの副作用もあるため、検査後はしばらく別室で安静にしていただく必要があり、当日は車やバイク、自転車の運転はできないといった制限があります。
経鼻内視鏡(鼻からカメラ)について
鎮静剤を使わなくてももっと楽に検査を受けられる胃カメラとして開発されたのが、経鼻内視鏡です。
経鼻内視鏡のメリットは、経口内視鏡(口からカメラ)と比べてスコープが細く柔軟性があるため、異物感が少なく、患者様の負担を軽減できるという点です。また、スコープが舌根部を通らず咽頭に触れないため、「オエッ」となる嘔吐反射が起こりにくいともされています。検査中医師との会話も可能です。麻酔が少量で済み鎮静剤も必要ないため、検査後の運転などの制限もありません。
デメリットとしては、鼻腔が狭い方や曲がっている方、その他症状をお持ちの方の場合、鼻の痛みやまれに軽度の出血がみられること、検査時間が若干長くなることなどがあげられますが、「口からの胃カメラで非常につらい思いをした」という経験をお持ちの方は、一度医師と相談し検討されてみてはいかがでしょうか。
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
肛門から内視鏡を挿入し、直腸から結腸・回盲弁(大腸の入り口)といった大腸全域を診る検査です。大腸は曲がりくねっているため、胃カメラに比べて挿入方法は少し複雑ですが、小腸の手前まで観察することができます。また、当院のスコープは硬度が手動可変でき、よりスムーズな挿入が可能となっています。この検査によって、腸炎、ポリープ、早期大腸がんなどを発見できます。
鎮静剤の使用について
大腸カメラにおいても、鎮静剤を用いた検査が可能です。内視鏡を挿入する際、大腸を伸ばしたり拡げたりして観察するため空気や炭酸ガスを入れるのですが、これによりお腹の張りや痛みを感じることがあります。このような場合には、鎮静剤を注射することで緊張を和らげ苦痛を軽減します。こちらも胃カメラ(経口内視鏡)同様、検査後は安静が必要となり、当日の運転などはできません。
胃・大腸内視鏡検査を受けてみませんか
胃がんも大腸がんも早期発見には定期検診が重要です。早期発見できれば、内視鏡での治療が可能です。
「痛くもない腹をさぐろう」40歳を過ぎたら一度、胃や大腸の内視鏡検査を受けてみませんか。
特殊な内視鏡検査
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影術)
胆のうや胆管、膵臓の病気を診断するために行う内視鏡検査で、胃や大腸の内視鏡検査とは少し異なり、X線(レントゲン)撮影と組み合わせた方法で行います。口から十二指腸まで内視鏡(特殊な胃カメラ)を入れ、その先端から胆管や膵管の中にカテーテル(細いチューブ)を挿入し、カテーテルから造影剤を注入してレントゲン写真を撮ります。
胆石や早期の胆管がん、膵臓がん、慢性膵炎の障害レベルなど、精度の高い画像検査ができるため、胆道や膵臓疾患の疑い、原因不明の上腹部の腫瘤などがあるときに用いられます。
さらに、この検査の際には胆汁や膵液を直接採取したり、細胞診などの精密検査を行えるほか、総胆管結石があれば取り除いたり(内視鏡的結石除去術)、胆管が閉塞していればステント(筒状の医療器具)を入れたり(内視鏡的ステント留置術)と、病状に応じてさまざまな治療や処置を行うことが可能です。
内視鏡治療(内視鏡手術)
内視鏡治療とは、小型カメラと手術器具の付いた内視鏡を用いて、モニターの映像を確認しながら、体の内側から病変の切除などを行う治療法です。お腹や胸をメスで大きく切る通常の手術とは異なり、体への負担が少なく治療後の回復が早いといったメリットがあります。早期のがんやその他の腫瘍、ポリープの場合は内視鏡での局所的な切除でも充分治癒が見込めることがわかっています。
内視鏡治療は、患者様の負担を減らす治療法として世界的にも大きな流れになっており、日々新しい技術が研究開発されています。
早期がんの内視鏡治療
1.ポリペクトミー(内視鏡的ポリープ切除術)
きのこのような茎のある形をしたポリープやがんを切り取る治療法です。病変の茎にスネア(輪状の専用器具)をかけて締め、高周波電流を流して焼き切ります。
2.EMR(内視鏡的粘膜切除術)
病変の下の粘膜下層へ薬剤(生理食塩水)を注入し、病変を隆起させてからスネアをかけて締め、高周波電流を流して焼き切る治療法です。創部(手術の傷)には出血予防のクリップをかけることもあります。茎のない平坦な病変の切除に適しています。
3.ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
スネアをかけることが難しい大きな病変に対しても行える治療法で、病変の周囲の粘膜を専用の電気メスで切開した後、病変の下の粘膜下層を少しずつ剝離して切除します。
理論的に切除する組織の大きさには制限がなく、広い病変を一度に剥離することができ、早期がんの場合この方法で切除することで、外科手術を行わずに根治を目指すことが可能です。
なお、治療対象となるのは、ほぼ粘膜内に留まっており、リンパ節転移の確率が低いと診断された早期がんです。
内視鏡的止血術
吐血や下血(黒色便・血便など)といった消化管出血を止めるために行う治療法です。止血の方法は、出血している血管や粘膜をクリップなどで挟んで圧迫止血する方法、出血部に高周波電流を流して血管を焼灼凝固する方法、止血効果のある薬剤を注入や散布する方法などさまざまあり、原因、出血部位、出血の状態により適した方法を選択します。
慢性肝炎や肝硬変に付随して生じる食道胃静脈瘤は、破裂して吐血や黒色便を引き起こすことがあり、患者様の生活の質(QOL)を著しく損なうばかりか、時に致死的な経過をたどることがあります。そのため、内視鏡検査などで静脈瘤を認めた患者様には定期観察を、そして破裂の兆候や破裂した痕跡があった場合には、次の予防的な治療を行っています。
1.EVL(内視鏡的食道静脈瘤結紮術)
静脈瘤に処置用の小さな輪ゴムをかけ、静脈瘤を縛って壊死させてしまう治療法です。1回の治療時間は約20〜30分で、通常1週間おきに1〜2回行います。
2.EIS(内視鏡的食道静脈瘤硬化療法)
静脈瘤内に直接硬化剤を注入し静脈瘤を血栓性硬化させる方法と、静脈瘤周囲に注入し食道潰瘍を作って食道粘膜を線維性硬化させるの方法と2種類あります。また、硬化剤の静脈瘤内停滞を向上させるために胃カメラに装着された風船を食道内で膨らませます。1回の治療時間は約30〜40分で、通常1週間おきに1~3回行います。
内視鏡的ステント留置術
1.食道ステント留置術
食道がんの進行によって食道が狭くなり食事摂取が難しい患者様に、内視鏡を用いて食道内にステント(筒状の医療器具)を留置する治療法です。狭窄部が広がることで流動食が摂れるようになるなど生活の質(QOL)の改善が期待できます。
2.胆管ステント留置術
胆管がんや膵臓がんなどによって胆管や膵管が狭くなり、胆汁や膵液の流れが悪くなると、胆管や膵管が炎症を起こし命に関わる場合もあります。そのため、内視鏡を用いてステントを留置し流れを改善させます。ステントは病態によって樹脂製のものや金属製のものを使い分けます。
PEG(内視鏡的胃ろう造設術)
必要な栄養を口から充分に摂取できない患者様に、内視鏡を用いてお腹の壁と胃の壁を通して小さな穴(胃ろう)を造り、その穴にカテーテルを入れる手術です。これによりカテーテルを通じて直接胃に栄養を投与することが可能となります。普段どおり入浴もでき、また鼻からのチューブなどに比べ、患者様の苦痛や介護者の負担が少なく、口から食事を摂るリハビリや言語訓練が行いやすいといったメリットがあります。定期交換でメンテナンスを怠らなければ、長期に渡る使用も可能です。
PEG(胃ろう)交換について
耐久性のあるPEGの器具ですが、異物であることに変わりなく、胃酸にもさらされていますので、カテーテルやボタンは一定期間での交換が必要になります。(バンパータイプは約半年毎、バルーンタイプは1~2ヶ月毎です。)
交換の方法はPEGの種類によって異なりますが、通常は体表面から麻酔無しで10分程度で交換できます。また、合併症などの異常が起こらなければ、通常は交換当日から経管栄養を再開できます。
当院でのPEG交換予約(初診)は、医療機関を通じてお受けしております。ご希望の方は、かかりつけ医師から紹介状をもらってください。
当院では、病院および診療所の先生方からのPEG交換の予約を承っております。
腹腔鏡下胆のう摘出術
現在の日本において、胆のう結石、胆のうポリープ、胆のう炎、胆のう腺筋症などの良性胆のう疾患に対して行う最もスタンダードな手術の方法です。特に急性胆のう炎は、発症から早期に適切な治療を行わなければ重篤となる病態であり、早期の腹腔鏡下胆のう摘出術が推奨されています。
お腹に小さな穴を数ヶ所開け、炭酸ガスでお腹を膨らませた後、一つの穴からは腹腔鏡(内視鏡)を他の穴からは手術器具を挿入し、モニターで確認しながら胆のうを摘出します。胆のうの状態にもよりますが、手術時間は1時間程度です。従来の開腹胆のう摘出術と比べると、傷が小さく術後の痛みも軽減できるため、早期の社会復帰が可能です。
ただし、高度な炎症や周囲臓器との癒着、術中の胆管損傷、出血などの理由で開腹手術に移行する場合もあります。
ご案内GUIDANCE
アクセスACCESS
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